労災保険の申請の方法

労災保険の申請は、被災者本人またはそのご遺族が行うのが原則です。

労災保険給付の請求は、被災者の所属事業所の所在地を管轄する労働基準監督署長に対して行うことになります。

 

申請に必要な書類は、労働基準監督署にも備え置いてありますし、厚生労働省のHPからダウンロードして使用することもできます。

 

ただ、実務上は、事業主(会社)や事業主(会社)と契約する社会保険労務士が労災申請を代行する場合も少なくありません。

その場合であっても、申請書類を労働基準監督署に提出する前に、必ず記載内容を確認する必要があります。

申請書には、「災害の原因及び発生状況」を記載する欄があり、事業主(会社)が代行する場合には、後の損害賠償請求を考慮して、事実と異なる記載がなされることがないとは言い切れません。

この点は特に注意が必要です。

 

被災者本人またはご遺族にとって労災保険の申請は、初めてのことである場合が多く、手続きに不安を覚えられる方も多くいらっしゃいます。

 

そこで、複雑な労災保険の申請を行う際には、弁護士に相談されることをお勧め致します。弁護士は、被災者・遺族の労働災害申請における支援を行うだけではなく、提出書類の添削、確認等も行います。

 

事業主の協力が得られない場合の対処法

労災保険の請求は、被災者ないしそのご遺族に認められた権利です。

そのため、事業主が労災保険の請求に協力しない場合であっても、当然に請求ができます。

 

労働基準監督署の窓口では、事業主の証明印をもらうように、説明を受けることがありますが、あくまで事業主の証明印は、被災者と事業主の間に雇用契約が成立していることを証明することで、労災保険の給付手続を円滑に行うためのものに過ぎません。

事業主には、そもそも、労災保険法施行規則23条で、労災申請に対しての協力義務が定められていて、被災者の労災請求を否定する権限はありません。

 

事業主がどうしても証明欄に捺印しないような場合は、その経過を記載した書面を作成して、申請書と一緒に労働基準監督署に提出することが考えられます。

 

各給付の申請手続

1 療養(補償)給付申請

医療機関での治療や薬剤の支給を受けたり、治療や薬剤の支給の費用そのものを請求する場合の申請です。

 

・「療養の給付」の請求

労災病院または指定病院等で治療を受けるために、「療養補償給付たる療養の給付請求書」(様式第5号ないし16号の3)に必要事項を記載して、療養を受けようとする医療機関等に提出します。

医療機関を経由して、労働基準監督署長に提出されます。

 

・「療養の費用」の請求

労災病院および指定病院以外の病院等において療養を行った場合は、その費用の給付を受けることが出来ます。

「療養補償給付たる療養の費用請求書」(様式第7号ないし16号の5)に必要事項を記入し、領収書等を添付して、労働基準監督署長に提出します。

 

2 休業(補償)給付申請

いわゆる休業損害の申請です。

休業して4日目から受け取ることができます。

「休業補償給付請求書・休業特別支給金支給申請書」(様式第8号ないし16号の6)に、必要事項を記入し、事業主および治療担当医師の証明をうけて、労働基準監督署長に提出します。

休業した日数分をまとめて一括請求するのか、または分割請求するかは、労働者が自由に選択することが出来ます。

一般的に、休業が長期間になる場合は1カ月ごとに請求します。

 

なお、交通事故における休業補償と異なり、有給休暇を使用すると、労災保険の休業(補償)給付は受けられなくなりますので、注意が必要です。

 

3 傷病(補償)給付申請

療養開始後1年6カ月を経過しても傷病が治っていないときは、その後1カ月以内に「傷病の状態等に関する届」(様式第16号の2)を労働基準監督署長に提出します。

 

4 障害(補償)給付申請

いわゆる後遺障害の申請です。

「障害補償給付支給請求書・障害特別支給金支給申請書・障害特別年金支給申請書・障害特別一時金支給申請書」(様式第10号ないし16号の7)に必要事項を記載し、労働基準監督署長に提出します。

請求書には、

①負傷または疾病が治ったこと・治った日・治った時の障害の状態に関する医師・歯科医師の診断書

②障害の状態を証明し得るレントゲン写真等の資料

を、添付する必要があります。

 

5 遺族(補償)給付申請

・遺族補償年金

業務または通勤が原因で亡くなった労働者の遺族に対し、年金が支払われます。

「遺族補償年金支給請求書・遺族特別支給金支給申請書・遺族特別年金支給申請書」(様式第12号ないし16号の8)に必要事項を記入し、労働基準監督署長に提出します。

労働者の死亡事実および死亡日、労働者との身分関係を証明することができる書類を添付することが必要です。

 

・遺族補償一時金

「遺族補償一時金支給請求書」(様式第15号ないし16号の9)に必要事項を記入し、必要な証明書類を添付して労働基準監督署長に提出します。

遺族補償一時金は、支給が決定されてすぐに支給されます。

 

6 葬祭料(葬祭給付)給付申請

いわゆる葬儀費用の請求となります。

「葬祭料請求書」(様式第16号ないし16号の10)に必要事項を記入し、事業主の証明を得た上で労働基準監督署長に提出します。

 

7 介護(補償)給付申請

「介護補償給付申請書」(様式第16号の2の2)に、必要事項を記入し、医師の診断書や介護に要した費用の証明書を添付して、労働基準監督署長に提出します。